ついに繰り出された、銭形氷河最大の奥義、オーロラ・4文銭・アタック。 その攻撃を受けたミロ医学者は、 「うわあああぁぁぁぁ〜〜 !! 」 と、ドップラー効果(*)の実験のような悲鳴をあげて、青い海の中にどっぽ〜ん★ 「おお、ミロ。おまえも、やっと、物理学の良さがわかるようになったようだな。見事なドップラー効果だ!」 「そんなこと言ってる場合かーっっ !! 」 ミロ医学者の抗議は、この場合、極めて妥当です。 確かに、今は、そんなことを言っている場合ではありませんでした。 何ということでしょう! 銭形氷河のオーロラ・4文銭・アターック !! は、一瞬のうちに、阿蘭陀行きの船を玉砕、カミュ物理学者とミロ医学者はもちろん、他の一般船客たちも、無論、小人たちと銭形氷河も、近くに島影ひとつない大海原の真っ只中に放り出してしまったのです! 「氷河―っっ! 投げた4文銭、拾ってーっっ !! (←9号もドップラー効果)」 「大丈夫だー、ピアノ線を結びつけてあるー(←銭形氷河もドップラー効果)」 「ならよかったーっっ !! (←安心しながらドップラー効果)」 「わーん、でも、僕たち、これからどーなるのー(←5号もドップラー効果)」 「大丈夫だー、俺をここまで運んでくれたイカの大群や、イルカさんやクラゲさんたちがいるー(←引き続き、銭形氷河のドップラー効果)」 「イカさんたち、船のお客さんたちを全員拾ってねー !! (←再度9号のドップラー効果)」 「イカイカ〜(訳:任せてくれー)」 9号の救援要請を聞いたイカの大群やイルカさんやクラゲさんたちは、迅速に行動しました。 折り重なるようにスクラムを組んで即席のイカイカダを作り、とりあえず、船の乗員乗客は全員無事にイカのイカダの上。 あれだけの大事故(?)に合いながら、幸い死傷者はひとりも出なかったのです。 けれど――。 銭形氷河ほどの体力を持たない一般人たちを乗せたイカのイカダは、これからどこに向かうのでしょう。 小人たちは、無事にカラスミと長崎ちゃんぽんを食べることができるのでしょうか。 医学界と物理学界の深い溝が埋まる日は来るのでしょうか。 そして、やっぱり、ジークフリート王子は、カシオス姫と結ばれる運命にあるのでしょうか。 今、小人たちと銭形氷河とカミュ物理学者とミロ医学者とその他大勢の乗員乗客の目に映るものは、青い海と青い空。 ただそれだけだったのです。 |
(*)注 ドップラー効果
1842年に、ドップラーが提案した波動現象の一つ。 音のドップラー効果を例にあげると、音源が観測者(聞き手)に向かって動いていれば、本来の音より高い音に聞こえ、聞き手が音源に向かって動いていれば高い音に聞こえる。その逆の場合は低い音に聞こえる。 パトカーや救急車のサイレンが、目の前を通り過ぎるまでは高い音に聞こえ、目の前を通りすぎた途端、低い音に聞こえるようになるのが代表事例。 |