「私の相手は、結構いますよ。紫龍・貴鬼に始まって、アルデバランから老師まで。なにしろ仕切り役なものですから、黄金聖闘士の面々との接点も多いですし」
と、牡羊座アリエスのムウ。


「俺は、せいぜいムウや星矢くらいのものだが、不思議だな。黄金聖闘士唯一のサブ系キャラで、活用方法はいくらでもありそうなものなんだが」
と、牡牛座タウラスのアルデバラン。


「私も、12宮戦の黒幕だったから総当たりに近いが、やはり、カノンとの組み合わせが多いのか? 黒サガ×白サガ一人××もありそうでなさそうで――あったのか?」
と、双子座ジェミニのサガ。


「俺は悪役だから、もろにSの役どころのようだが……。紫龍相手が多いか? ムウ、貴様との絡みもあったような気がするぞ」
と、蟹座キャンサーのデスマスク。


「この好青年の俺ですら、組み合わせは結構あるぞ。死んだ兄貴から星矢まで、バラエティに富んでいる」
と、獅子座レオのアイオリア。


「私のメインの相手は一輝になっているのか? 受け外見なのに攻めが多いな」
と、乙女座バルゴのシャカ。


「ふぉっふぉっふぉっ。わしは座っている時には、紫龍とムウがメインで、殻が剥けてからはシオンあたりじゃの」
と、天秤座ライブラの老師。


「私の場合は、何と言ってもカミュ相手のことが多いが、氷瞬界では、アンドロメダにちょっかいを出しまくっている。あれはいったい何故なんだろうな」
と、蠍座スコーピオンのミロ。


「俺のメインの相手はやはり、シュラのようだな。生きている奴等に比べれば、バリエーションは少ないか……」
と、射手座サジタリアスのアイオロス。


「俺はやはり紫龍と、それからアイオロスか。アテナ命のキャラだから、あまり面白味がないんだろーか」
と、山羊座カプリコーンのシュラ。


「…………。ミロと氷河……」
と、水瓶座アクエリアスのカミュ。


「私は、アンドロメダをいたぶりすぎたのか、アンドロメダ相手のSMが多いな。アンドロメダの他にはサガあたりか。この美貌をもってすれば、黄金聖闘士全員に狙われていてもおかしくないと思うのだが」
と、魚座ピスケスのアフロディーテ。



――とまあ、各々の現状報告が為された後、黄金聖闘士たちは、フリーディスカッションに入った。


議場は、聖域・教皇の間。
議題は当然、アテナが間もなく発布・施行するという『ほも禁止令』の是非について、である。


「いずれにしてもだな。我々のように個性的なキャラクターであったとしても、いいカップリングの相手がいないと、本編での活躍はすぐに忘れられ、ファンの印象も薄れていくというのは、疑問を挟む余地のない事実だ」

「正義や友情だけで、キャラ考察するのには限界があるし……恋愛が絡んでいないとつまらんのだろう、婦女子には」

「白銀聖闘士などは、それがもっと顕著だな。白銀聖闘士の中では最も奇天烈キャラのミスティでさえ、カップリングの相手に恵まれなかったせいで、ひとしきりギャグネタに使われた後は、お払い箱だ」

「白銀は確かに影が薄いな。せいぜいアルゴル×アンドロメダくらいのものか。結構面白いキャラもいたはずなんだが……」

「ファンどころか、我々も忘れているんだ、仕方あるまい。この世界、ファンはカップリングでキャラを記憶するようにできている」


「…………」 × 12



意見は出尽くしたようだった。
そうなのである。
それが現実というものだった。

「アテナの『ほも禁止令』が施行されたら、我々ですら危ないぞ」
「うむ。最高位の聖闘士だから大丈夫という油断は禁物、ファンは非情だ」

聡明にして賢明な黄金聖闘士たちは、わかりきっていた結論が、予想通りに導き出されてしまったことに、そうして、深い深い溜め息をついたのである。
ともかく、それが12人の黄金聖闘士たちの結論だった。


「話は決まったな。では、皆々、この嘆願書にサインと血判を頼む」

黄金聖闘士の長たる天秤座ライブラの老師はそう言って、愛用の傘の中からおもむろに、極上のみつまた和紙の巻紙を取り出した。





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