「こ…子供じゃないですか! 社長は何を考えてるんですか! わが社は、従業員2、3人の町工場や個人経営の飲食店じゃないんですよ! 3万人近い従業員を抱える城戸グループの財務を任されていて、当社だけで二千人の社員、財務部門担当の常務の下には、直接つく部下だけで四百人もいるのに!」
瞬が常務室に入るとすぐに、氷河が財務本部内に作ったプロジェクトチームのリーダーが、氷河のデスクに駆け寄ってくる。

「うちは、株式の4割を社長とその一族が抑えている会社だ。株主総会の承認は得られるだろう」
「株主が承認しても、社員は承認しませんよ! あんな子供は追い出すべきです!」
「…………」

チームリーダーの気持ちはわからないでもないのだが、昨夜、瞬に、兄の会社に入ることを勧めたのは、他ならぬ氷河自身である。

昨夜の心細げだった瞬の肩を思うと、氷河はリーダーに頷き返すことはできなかった。





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