「氷河、おまえ、最近露骨だぞ」

星矢が何を言っているのかが、氷河にはすぐにはわからなかった。
が、彼が最近意識して為している行為はただ一つだけだったので、おそらくそのことだろうと、察することはできた。

つまり、氷河は、意識して、瞬を避けていたのである。

それが、この明朗快活・天衣無縫な天馬座の聖闘士には理解できない――もしかしたら、不快な――ことだったのだろう。

氷河は、その場を笑ってごまかそうとしたのだが、“細かいことは気にしない。気になることは徹底して追及する”星矢の、目下の関心はそのことにのみ向けられているらしかった。
こういう場合に星矢の追求を逃れることはまず不可能である。
今の星矢は、『雪はどこから降ってくるの?』と母親に尋ねる3歳児と大して変わらない。納得できる答えをもらうまでは、母親の服の裾を離さないのだ。


氷河は、腰掛けていた肘掛け椅子のアームに肩肘をついて嘆息した。
服の裾を離してもらうためには、納得できる答えを星矢に与えなければならない。
そして、あいにく星矢は、『お空には、たくさんの雪を作ってくれる雪の小人さんたちがいるのよ』という答えで納得してくれる3歳児ではなかった。





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