紫龍は、地上の平和と人々の安寧を守るため、俺はまだこの場を離れられない――とか何とか、もっともらしい理屈を並べた手紙でも書くことにしたのだろう。 紫龍が席を外して自室に戻って間もなく、瞬もまた、それまで掛けていたソファから立ち上がった。 「氷河。僕、ちょっと出掛けてくるね」 実は、瞬は甘党でない氷河へのバレンタイン・プレゼントに毎年苦慮していた。 結局いつも、氷河の『俺の欲しいものはおまえだけだぞ』の言葉に甘えてきたのだが、毎年自分ばかりがチョコレートを贈ってもらうような事態をいつまでも続けるわけにもいかない。 春麗のバレンタイン・プレゼントは、さすがに女性だけあって目の付けどころが違う――と、瞬は感心し、今年は自分もその手でいってみようと考えたのである。 |