「しばらく入院させようと思うの」
「……精神神経科にですか」
「…………」

返答しないことで、沙織は氷河に肯定の意を伝えた。
そして、それは、氷河にとって受け入れ難い事態だった。

「馬鹿げている! 瞬はそんなに弱い人間じゃないぞ!」

そんなこともわからないような女に、自分を女神だなどと標榜してほしくない。
その強さと平和を望む心を信じてもらえていると思えばこそ、瞬はアテナの謳う平和のために闘い続けてきたというのに。

「氷河、弱さじゃないのよ。瞬は繊細なの。いいえ、普通はそうなの。誰だってそうなの。あなた方が強いだけなのよ!」
「瞬が俺より弱いはずがないだろう !! 」

大人しくしているのも、それが限度だった。
氷河は、無言で沙織を腕を掴みあげ、ドアの前から押しのけた。
口を開いたら、どうも女神であるらしいこの少女を罵倒してしまいそうだったし、氷河は、そんなことに無駄なエネルギーを使いたくはなかったのだ。

沙織を、星矢たちに押しつけるようにして、自室のドアを開ける。

「氷河、何をする気なの、瞬は病人なのよ!」
その肩を星矢に受け止められた沙織の訴えを無視して、氷河は室内に入り、そして、彼はそのままドアに鍵をかけてしまった。






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