この世に生まれ落ちた時、人は必ず大きな泣き声を響かせます。 それは、誰からも傷付けられることのない、自分の心だけでできていた世界から、自分の心以外のものであふれている広い世界に無理矢理引きずり出されるからです。 そこには、自分以外の人がいて、自分にはわからない言葉を話し、自分の欲しいものを手に入れるためには、人と争ったり、血のにじむような努力をしたりしなければなりません。 “欲しいもの”すらないほど満ち足りていた世界から、そんな場所に連れ出される赤ちゃんの心細さはどれほどのものでしょう。 でも、安心してください。 新しい命が世界に生まれ落ちるたび、赤ちゃんたちの許には必ず一人の妖精が現れます。 赤ちゃんの許を訪れる妖精は、知恵の妖精だったり、富の妖精だったり、勇気の妖精だったりします。 そして、不安で泣き叫んでいる赤ちゃんに、そっと囁くのです。 『さあ、泣くのをやめて。あなたがこれから生きていくために、私があなたに“知恵”を授けましょう』 あるいは、 『元気な赤ちゃんね。私はあなたに“勇気”をあげるわ』 というように。 妖精からの贈り物をもらった赤ちゃんは、それで少し安心して、やっと泣くのをやめるのです。 |