「生きるってことは、放棄することを許されない権利なのかもしれないね」 やっと、瞬の身体がそこに在ることを確認し終えたらしい氷河の腕に、自身を寄り添わせるようにして、瞬は小さく呟いた。 人は死を怖れる。 そして、同時に、生きることをも怖れる。 だから、人間は自らの生と死とを耐えるために、“愛する”という行為を発明したのかもしれない。 そして、誰かに愛され、愛することで、その権利はますます放棄し難いものになっていくのだ。 「生きていたいよ、僕は。僕と氷河のために」 瞬は『義務』とは言わなかった。 生きることは、義務ではないのだ。 Fin.
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