「あ、車が入ってきたぜ」 「9人目のお仲間かな」 星矢と紫龍のそれだけの会話に、俺の心臓が撥ねあがる。 瞬だろうか? 俺のまだ見ぬ――俺に、6年の孤独を耐えさせてくれた――無原罪の天使。 そう期待しては、懐かしくはあってもつまらない顔ばかり見せられてきた俺は、すぐにはその場から動くことができずにいた。 だが。 ふいに俺の身体を暖かい空気が包んだ。 優しく暖かい感触。 それが何を意味するのかを悟って、俺は、脱兎のごとく部屋を飛び出した。 会える――! 会えるんだ、俺は。 瞼の奥に思い描き続けた、俺の天使に。 俺は泣き出してしまいそうだった。 城戸邸のエントランスを出た俺の身体を、暖かく細い雨が濡らす。 星矢の言葉通り、城戸邸の庭には優しい雨が降り出していた。 白い雪と氷だけのシベリアで、唯一白でない色を持ち、俺の心を瞬の許に運んでくれた青。 空が――俺の代わりに泣いてくれているようだった。 Fin. |