「ああ、だが、出掛ける前に……瞬、おまえの色は何だ?」

「え?」

とりあえず、それだけは確認しておかなければならない。

突然脈絡のないことを訊かれた瞬が、その場できょとんとする。
首をかしげながら、瞬は、緑でも黒でもない色の名を口にした。

「僕の色……って、えーと、僕、すみれ色が好きだよ」

瞬のその答えを聞いた一輝が、ふいに爆笑する。
それは、瞬の答えが兄と恋人の両方の推察を裏切るものだったとしても、そこまで笑うほどのことだろうかと、氷河が訝るほどの大爆笑だった。


「???」
兄の大笑いの理由がわからなかったのだろう。
瞬は、苦しそうに腹を抱えている兄を見詰めて、瞳をきょときょとさせていた。

「兄さん、何がおかしいの。僕、何か変なこと言いましたか?」
「いや、何でもない。開演に遅れるぞ。さあ行こう」

抑えきれない笑いに涙まで浮かべている一輝に促され、瞬は首をかしげかしげしながら、一輝と共に城戸邸を出ていった。




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