そう、ロシアのお友達はちっとも悲しむ必要なんかなかったのです。 銀杏の木の下で泣いていたロシアのお友達の男の美学の背中が、瞬ちゃんの胸を打ったのでしょうか。 それとも単に、困っている人(この場合は困った生徒)を放っておけない瞬ちゃんの性癖の為せる業、あるいはロシアのお友達の無言の要求が通じたのでしょうか。 瞬ちゃんは翌日から、あれやこれやとロシアのお友達の世話を焼いてくれるようになったのです。 「ね、氷河。日本では、学校の中では上履きに履き替えるんだよ」 だの、 「明日は体育の授業があるから、ちゃんと体操服持ってきてね」 だの、優しく教えてあげる瞬ちゃんは、見ようによっては、すっかりロシアのお友達の世話女房。 瞬ちゃんは、ロシアのお友達のあまりに自然かつ強引な態度に引き込まれ、いつの間にか、ロシアのお友達は自分の同級生なのだという気分になっていたのです。 もちろん、他のクラスメイトたちは、ロシアのお友達に何を言うこともできません。 まして、気の弱い――もとい、生徒の気持ちを大切にする――アルビオレ先生に何を言うことができたでしょう。 今日は、そんなロシアのお友達と瞬ちゃんの授業風景を覗いてみましょう。 |