夏休み明けに提出された瞬ちゃんの日記を見て、瞬ちゃんの担任のアルビオレ先生は頭を抱えていました。
慌てて、瞬ちゃんを職員室に呼び出して、事の次第の確認です。





「瞬、おまえ……」
「はい?」

「おまえ、夏休み、氷河くんの家にお泊まりに行って、一緒にプールに入って、一緒にお風呂に入って、体の洗いっこまでして、体をさすられながら抱き合って眠って、ちゅうまでされたのか……?」
ロシア男の手の早さに呆れ果てながら、アルビオレ先生は瞬ちゃんに尋ねました。

ロシアのお友達とマーマのおかげで、いつもよりずっと楽しい夏休みを過ごせた瞬ちゃんは、元気に明るいお返事です。
「はい! 氷河のマーマは、『氷河は寂しがりやだから、大人になってもずっと氷河と仲良しでいてね』って言ってました。大人になっても、一緒に眠ったりお風呂に入ったりするのは、全然おかしなことじゃないんだって」

「…………」
アルビオレ先生は、『それはおかしい』と言って理由を聞かれた時の答えが思いつかなくて、何も言うことができません。

「それに、氷河のマーマの作ってくれるおやつは、とってもおいしいんです! 氷河と仲良ししてたら、もっともっとおいしいおやつを食べさせてくれるんだってv」

「…………」
アルビオレ先生は、ロシアのお友達親子の共同戦線の強力さにめげそうでした。
それでも、なんとか気を取り直して、アルビオレ先生は瞬ちゃんに訊いてみたのです。

「あ…あー、瞬、おまえ、氷河くんを好きなのか? ちゅうされてもいやじゃなかったのか?」
「ロシアの人たちは、みんなそうするんだそうです。僕が、『それほんと?』って聞いたら、氷河のマーマが、ロシアの大統領とアメリカの大統領が抱き合ってちゅうしてるニュースのビデオを見せてくれました」

「…………」
『そりゃあ、ほっぺたの話だろう』
と言ったところで、何が変わるものでもないことに、アルビオレ先生は薄々気付いていました。

「氷河のちゅうは、わたあめの味がしました」
そう言って、ぽっ☆と頬を染める瞬ちゃんに、アルビオレ先生の口許が引きつります。
いつもの優しい微笑みも、今日ばかりはアルビオレ先生の上から消え去っていました。

「アルビオレ先生、僕、もう帰ってもいいですか? 氷河は、僕が他の男と一緒にいるのが嫌なんだって。寂しくて悲しくなるんだって。氷河が悲しいの、僕、嫌なんです」

大真面目な顔をしてそう言う瞬ちゃんに、アルビオレ先生は、それでも根性で笑顔を作ってあげました。


そうして、次の瞬間。
アルビオレ先生は、ばったーん☆ と、その場に卒倒してしまったのです。






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