「どこから探そうか?」
「あそこに案内図がある」
「あ、ほんとだ」

ロシアのお友達が指し示したその先には、横幅が3メートルくらいもある、巨大な『小人さんの森彫刻高原』の案内用立て看板が立っていました。
その大きさだけでも、『小人さんの森彫刻高原』の広大さが伺えるというものです。

「あそこまで競争だよ、よーいどん!」
「!」

言うなり走り出した瞬ちゃんを、すぐに追いかけようとしたロシアのお友達でしたが、何ということでしょう。
一歩足を踏み出したところで足がもつれ、ロシアのお友達は、その場に、どべちゃっ★ と転んでしまったのです。

どうやら、さっきの超高速ドライブのダメージが、ロシアのお友達の脚にきていたようでした。
カミュ先生との熾烈な戦いの中で鍛えぬかれた逃げ足の速さも、ヒルダさんの華麗なるドライビングテクニックの前には形無しだったのです。

おまけに、転んだ拍子にリュックの口が開いて、中にいっぱい詰め込んでいたおやつが、どば〜っ★ と辺りに散らばってしまいました。

「氷河っ! 大丈夫っ !? 」
「うん……」

ロシアのお友達は男の子です。
普段から無口ですし、瞬ちゃんに心配をかけることはできませんから、膝小僧を擦りむいたって泣いたりなんかしません。
いつものロシアのお友達なら、こんな時には、すぐに起き上がって、瞬ちゃんに元気な顔を見せていたことでしょう。
けれど、この場合は──。


「……? 氷河?」
何を思ったか、転んだ態勢のまま、ずりずりと匍匐前進を始めたロシアのお友達。

「どうしたの? 立てないの?」
まるで訓練中の自衛隊員かアザラシのような格好のロシアのお友達を心配して、瞬ちゃんはロシアのお友達の横にしゃがみ込みました。

そうしたら。

「……見っけ」
「え !? 」
「瞬、ここに彫刻がある」
「あ〜っ、ほんとだっ!」

ロシアのお友達がずりずりと這いずっていった大きな木の根元。
そこには、『1号』というプレートを持った小人さんの彫刻がちょこんと立っていたのです!


「やった〜! 氷河ってすごいね! ありがとう!」

ちょうど転んだ視線の先に、幸運にも小人さんの彫刻を見つけたロシアのお友達。
これぞ、棚からぼたもち、瓢箪から駒、転ばぬ先の杖いらず(■注 そんな諺はありません)。

瞬ちゃんに感謝の眼差しを向けられたロシアのお友達は、つぶれたカエルみたいな格好のまま、ロシアのお友達冥利に尽きる! と、ロシアのお友達でいることの幸せと充実感を噛みしめたのでした。


ともかく、こうして、ロシアのお友達と瞬ちゃんのスタンプラリーの台紙には、1個目のスタンプがぺたんと押されることになったのです。






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