「瞬、次の彫刻を……ん?」
「どうしたの?」
「今、何かが窓のあたりを走っていった」
「え?」

ロシアのお友達は、その小さな影の正体を突きとめるべく、窓の側に近寄りました。
けれど、そこには何もいません。

「変だな。確かに何かがいたのに」
と言って、ロシアのお友達が窓から少し身を乗り出した時、何だか怪しい小さな影がすすすすすっ☆ と、ロシアのお友達の腕を駆けあがって肩に登り、背中を滑ってどこかに消えてしまったのです。

「えっ !? 」
驚いたロシアのお友達が、窓から身を乗り出していたにも関わらず、身体を支えていた腕を窓の桟から離してしまったからたまりません。

そうです。
せっかく瞬ちゃんのちゅうで元気を取り戻したばかりだったロシアのお友達は、2階の窓から、庭に向かって真っ逆さま。

「氷河―っっっ !! 」
瞬ちゃんは、泣きながら、ロシアのお友達を追って窓から飛び降りました。
ロシアのお友達と違って、ちゃんとした態勢で飛び降りましたから、着地も見事です。
瞬ちゃんは、可愛くて優しいだけでなく、運動神経も抜群なのです。

「氷河っ!」
瞬ちゃんが、あたりに散らばったおやつをよけながら、ロシアのお友達の側に駆け寄っていくと、めちゃくちゃな態勢で庭に落っこちた瀕死のロシアのお友達は、がくがく震える腕を伸ばし、自分の落ちた場所の横にある大きな木を指差しました。

「あの木……」
「木? あの木がどうかしたの?」
「木のうろで、小人が隠れんぼしてた」
「え?」

瞬ちゃんが、教えられた木のうろ(ちょうど瞬ちゃんの頭の高さにありました)を覗いてみると、そこにはヌイグルミの小リスと一緒に、小人さんの彫刻が一つ置いてあったのです。
ロシアのお友達の動体視力は並の人間のものではないようでした。






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