決意も新たに、『小人さん広場』を出たロシアのお友達と瞬ちゃん。 『小人さん広場』を出たところに、2人の行く手を示してくれる看板が立っていました。 「わぁ、この先に小人さん商店街があるんだって」 「よし、行こう!」 というわけで2人が次に向かったのは、小人さん商店街のエリアでした。 小人さん商店街は、商店街と言っても、要するに、お城の門の前にテーブルが1つ置いてあるだけの露店のようなものです。 そのテーブルの上に、小人さんたちが使い古したおもちゃや古着やミニ本のように小さな同人誌が並んでいます。 小人さん商店街は『売れるものなら何でも売る』がモットーなのか、テーブルの上には、どんぐりや松ぼっくり、果てはバンドエイドや折れた刺繍針までが並んでいました。 「可愛いお店だね」 「…………」 そう言う瞬ちゃんに頷きながら、ロシアのお友達がじっと見詰めていたのは、小人さん商店街に隣接している氷の国の氷河のぱんつ縫製作業スペースでした。 そこでは、等身大の氷の国の氷河の像が背中を丸めて小さなぱんつを縫っている様子が再現されていました。 (ぱんつばっかりいじってたって、中身に触れないことには意味がない……) (こんなちっこいものを、でかい図体した男がちくちく縫う姿は哀れみがあるな) ――なーんて悟ったりしながら、何気なく、氷の国の氷河の像が手にしているぱんつにちょっと触れてみたのがいけなかったのかもしれません。 突然、氷の国の氷河の像がぐおぉぉおっ★ と立ち上がったかと思うと、その像がロシアのお友達の方に向かって歩いてきだしたのです。 「なっ…… !? 」 実は、その氷の国の氷河の像はからくり人形でした。 ぱんつに触るのとは何の因果関係も無く(;;)、1日3回定時になると、『氷の国名物、恒例・たそがれの帰路』のパフォーマンスが始まるのです。 リモートコントロールされた氷の国の氷河の像は、いったんお城の中に入った後で、『小人さんの森彫刻高原』メンテナンスルームで油をさしてもらい、またこの商店街へ戻ってくることになっていました。 が、そんなことは露ほども知らないロシアのお友達が、運悪く、氷の国の氷河像の巡廻コース上に逃げてしまったからたまりません。 本当なら、こんな像の1つや2つ、簡単にかわして蹴りの一つでも入れてやるところなのですが、いかんせん、ロシアのお友達は、さっきも足元がふらつくほどのダメージを受けたばかり。 脚がもつれて、その場にスッ転んでしまいました。 「氷河ーっ!」 機械仕掛けの氷の国の氷河の像は、けれど、自分の進路上に人がいることに気付きもしません。 その場に倒れ伏したロシアのお友達の背中を踏みつけて、がしゃんがしゃんとお城の中に去って行きました。 「氷河、しっかりしてっ!」 「瞬……あ…あれを……」 「え? あ……!」 ロシアのお友達が指差したその先――からくり人形の氷の国の氷河のいた場所に、はだかんぼの小人さんの彫刻が1つ。 12個目の小人さん彫刻です。 今回も、ロシアのお友達の強運は大したものでした。 しかも、ロシアのお友達は、我が身の危険も省みず、氷の国の氷河像に踏みつけられないようにと、おやつの入った大事なリュックを電光石火の早業で退避させていたのです。 何と言っても、おやつが粉々になってしまったら瞬ちゃんが悲しみますからね。 ロシアのお友達の瞬ちゃんへの愛は、実に健気なものでした。 そんなロシアのお友達の気持ちは、もちろん、ちゃんと瞬ちゃんに通じていました。 小人さん商店街は単なるレプリカでなく、ちゃんとした販売機能を持っているのです。 無人販売所と同じシステムで、購入した分の料金を置いておけば販売物を持っていっても万引きにはなりません。 瞬ちゃんは、代金にアーモンドチョコレートを2粒払って、ロシアのお友達のためにバンドエイドを1枚買いました。 そして、それを、ロシアのお友達の擦りむけてしまった膝小僧に貼ってあげました。 ロシアのお友達は、本当は、膝より背中の損傷の方がひどかったのですが、瞬ちゃんに膝を撫でてもらい、『痛いの痛いのとんでけ〜』をしてもらったら、背中の痛みも一緒にどこかに飛んでいってしまったのでした。 |