小人さんたちが才能豊かなことは周知の事実です。 次にロシアのお友達と瞬ちゃんが向かったのは、小人さんたちの才能展示場でした。 そこは、小人さんたちの、実益を兼ねた趣味の紹介コーナーです。 才能展示場の最初のコーナーはコミケットコーナー。 コミケ会場の25分の1モデルが置いてあります。 そのコミケ会場の中では、普通サイズの人たちが小人さんサイズ。 幅20メートルほどのミニチュア・コミケ会場に長さ5センチほどの机がずらーっと並べてあって、小人さんサイズのおたくさんやおたく娘さんたちが、うじゃうじゃうじゃと群れをなしているのでした。 そんな中に25分の1サイズの小人さんの模型を置いても何が何だかわかりませんから、小人さんのサークルスペースだけが、原寸大で、ミニチュアコミケ会場の横にありました。 長い机が一つ置いてあって、机の半分に、瞬ちゃんズの本と瞬ちゃんズのお人形、もう半分のスペースに、小人さんお手製の小さな小さな本と、お人形の小人さんたち。 お人形の小人さんたちは、自分たちの本を並べたり、チラシを片付けようとしたりしていました。 「これは、彫刻じゃなくて、お人形だね」 「うん」 「コミケって、何するとこなんだろうね」 「…………」 「ちょっと興味あるよね」 「…………」 ロシアのお友達は、ほんとのことを言うと、瞬ちゃんにコミケに興味を持ってほしくありませんでした。 コミケが何なのかはロシアのお友達も知りませんでしたが、もし瞬ちゃんがコミケに夢中になってしまったら、自分が放っておかれることになるような気がしたのです。 「これは彫刻じゃないから、他のところに行こう」 ロシアのお友達は、さりげなくそう言って、その場から瞬ちゃんを連れ出そうとし――そうして、またまた才能を発揮してしまいました。 ロシアのお友達は、小人さんたちの売り場スペースの机の角にあった、怪しげなスイッチに触れてしまったのです。 それは、小人さんたちのスペースに殺到するお客さんの様子を再現するスイッチでした。 もちろん原寸大です。 突然、ロシアのお友達の背後の床がぱかっ☆ と口を開け、そこから、小人さんたちの限定本を手に入れようとして血走った目をしたお姉さんやお兄さんの人形が、ロシアのお友達めがけて突進してきました。 「瞬、よけろっ!」 例によって、ロシアのお友達は、瞬ちゃんだけは危地から避難させ、それから、おやつの入ったリュックを遠くに放り投げ、自分は――自分は、原寸大おたくの群れに踏み潰されました。 「氷河っ! 氷河っ、大丈夫っ !? 」 おたくの群れが、小人さんたちの売り場スペースに群がり、売り場スペースの机の上では、機械仕掛けの小人さんたちがダンスを踊っています。 小人さんたちのダンスが終わると、原寸大おたくの群れは、すみやかに、もとの床下の穴に消えていきました。 |