お花畑は、『小人さんの森彫刻高原』小人さん才能展示場のちょっと先の丘になったところにありました。
色とりどりの花が咲いていて、とても綺麗です。
それを見た瞬ちゃんは嬉しくなって、夢中になって花を摘み始めました。

「珍しいお花があるよ。綺麗な色だね」
「うん」
「わぁ♪ あっちにも可愛いお花」
「うん」
「あ、そっちのお花も綺麗」
「うん」
瞬ちゃんは綺麗なお花に夢中、ロシアのお友達は、そんな瞬ちゃんに夢中です。


ところで、皆さんは山菜取りに出かけた人が遭難してしまったというニュースに、一度ならず接したことがあると思います。
険しい山でも吹雪の中でもないのに、そんなことになってしまうのは、いったいなぜだと思いますか?
それは、目の前の山菜ばかりに気を取られて、周りの景色を見失ってしまうからなんです。
――まるで、今のロシアのお友達と瞬ちゃんみたいに。

瞬ちゃんは目の前のお花に気を取られ、ロシアのお友達は目の前の瞬ちゃんに気を取られ――2人は、いつの間にか『小人さんの森彫刻高原』の散策順路を大きく外れて、『小人さんの森彫刻高原』の広い敷地のはじっこの方へと入り込んでいました。


『小人さんの森彫刻高原』は、敷地内に小川や森のある大きな自然公園になっています。
広大な敷地のはじっこの方は、豊か過ぎる自然が幅をきかせていて、ほとんどその辺の小山と変わりないようになっていました。

「あ、もみじの葉っぱだ」
「うん」

瞬ちゃんが紅葉の葉っぱを見つけたということは、2人が、『小人さんの森彫刻高原』の端の端まで来てしまったということです。
そろそろ引き返した方がいいところにまで踏み込んでるのに、2人はまだそれに気付いていませんでした。

「リスがいたよ!」
そういって駆け出した瞬ちゃんを、ロシアのお友達が追いかけます。
そのまま、2人でどんどん走って――

「わぁっ !? 」
「瞬!」
踏み出した足の先にあるべき地面がないことに気付いた時には、すべてが遅すぎました。
その時には既に、2人は揃って、そこで森を途切れさせている崖から落ちてしまっていたのです。

もちろん、ロシアのお友達は、身を呈して瞬ちゃんとおやつを守り抜きました。
そして、それが、ロシアのお友達の体力の限界でした。
ロシアのお友達は、崖から落ちた瞬ちゃんのクッションになって、とうとう、そのまま気絶してしまったのです。






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