花を抱くのは花じゃないの。 花を抱くのは人間なの。 僕は花じゃないよ。 氷河は花かもしれない。 氷河がそう望んだのなら。 でも、僕が花だっていうのは、氷河の幻想だよ。 僕は人間だから。 ――瞬。 だから、今、花を抱いている人間は僕で、抱かれてる花は氷河なの。 氷河が望んでいたのは、僕を抱きしめることじゃなくて、僕に抱きしめられることなの。 氷河が望んでいたのは、そういうこと。 瞬。 今もそう? 瞬。 今も、そうなの? 花になって、僕に見詰められていたい? 抱きしめられたい? ……いや。 氷河は今、何になりたいの。 おまえを食らう獣 氷河…… ――の振りをした、人間だな。 うん。 じゃあ、来て。 僕を食らう獣の皮を脱ぎ捨てて、僕の中に。 今、 もうすぐ、 俺は花じゃなくなる――。 Fin.
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