「――いつも不思議だったんだが」 闘いが済むと、一輝は、弟と仲間たちの許から姿を消した。 いつものこととは言え、城戸邸から一輝の姿が見えなくなると、そのたびに、氷河は瞬の様子が気にかかる。 「おまえは何故、一輝を追いかけないんだ」 氷河は、『気を落とすなよ』と慰める代わりに、そう瞬に尋ねた。 「一緒にいたいんだろう?」 否定の言葉を半ば以上、否、100パーセント期待していたが、望み通りの答えが返ってくることを、氷河は120パーセント想定していなかった。 「一緒にいたいけど、追いかける必要はないから」 ベランダから、冬の白い月を見上げながら、瞬が氷河を振り返らずに答える。 ぴんと張りつめている夜の冷たい空気。 星のない夜空に一人きり浮かぶ、愛想のない月の光。 瞬の肩が細く見えるのは、強がっているからではないことを氷河は知っていた。 それは、氷河自身がそうあってほしいと願っているから、でしかない。 そして、氷河がそう願うのは、そう見える方が瞬を抱きしめやすいから――だった。 ただそれだけのこと、なのだ。 |