「――学校?」 女神にしてグラード財団総帥・城戸沙織が、その話を持ち出したのは、闘うべき敵を失った聖闘士たちに新しい生きる目的を与えようとしてのことだった。 幼くして両親を失い、自ら望んだわけでもないのに厳しい修行に出され、12宮戦を闘い、ポセイドンやらハーデスやら神と名乗る者たちを倒してきたアテナの聖闘士たち。 10代の若さで、一般人が一生かけても経験し尽くすことはないだろう経験を経験し尽くしてしまった聖闘士たちの将来を、沙織は憂えたのである。 無論、彼女は、彼等の一生に経済的な援助を惜しまないつもりではいた。 それでも償いきれないほどの犠牲を、彼等は地上に生きる人々のために払ってきたのだから。 だが、彼等はまだ10代。 そして、人の一生は長い。 彼等には、闘いとは別の、生きる目的が必要である。 今更ながらではあるが、それを見つけるために、もっとも適した場所は、他の10代の少年たちと同様に“学校”という場であろうと、沙織は考えたのだった。 しかし――。 |