実のところ、“秘密”は結構楽しかった。


夜、星矢たちが寝静まった頃、こっそりと瞬の部屋を訪ねる。
瞬が俺を待っていて、待ち焦がれたように俺に腕を絡めてくる。

『内緒にしておいてやるから』
と半分脅迫めいたことを言って、俺は、恥ずかしがる瞬に色々なことを教え込んだ。

瞬と過ごす夜は、確かに楽しかった。


だが、“秘密”を守らなければならない昼の間は――。

星矢や紫龍が瞬に親しく話しかけるたび、奴等がそんなつもりで瞬に接しているのではないことはわかりすぎるほどわかっているのに、
『瞬は俺のものだ。馴れ馴れしくするな』
と怒鳴りつけたい気分になって、俺はひどく苛立った。


些細なことが気になって、しなくてもいい嫉妬に悩まされる。
それが“秘密”でさえなかったら、俺はそんなふうにはならなかっただろうに。



「氷河、どうしたの」
「おまえ、今日、紫龍と楽しそうに何か話してただろう」
「やだ、妬いてるの」
「妬いちゃ悪いのか? 俺は、おまえに近寄る奴等全員を、俺のものに手を出すなと殴りつけてやりたいくらいだ」
「氷河、そんなの子供じみてるよ」
「自分がガキだとよくわかったさ。だが、仕方あるまい」
「氷河、ほんとにおかしいよ。僕は今はこんなに氷河のものなのに」

そう言って、瞬は俺にすがりついてくる。

そうじゃないくせに――と、なぜか俺は考えて――感じて――いた。
いずれにしても、俺の所有欲(多分、それは独占欲ではなかった)は、“秘密”のせいでますます強くなった。


昼間瞬に触れられない分のつけが、夜に来る。
俺に抱かれて歓喜している瞬を見るたび、もしかしたら、瞬の“秘密”の目的は、こんなふうに俺を煽り立てることなのではないかとさえ、俺は思った。

もしそうなら、瞬の企みは的を射ていた。
実に効果的だった。

もしそうだったなら――それが瞬の目的だったのなら、俺はどんなに嬉しかっただろう。






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