瞬は、あの後、一輝に告げたのだそうだ。 「兄さん、僕、氷河が好きなんです。もしかしたら、兄さんよりも」 一輝は、少しの間をおいて、 「そうか」 とだけ答えたらしい。 『一輝よりも』というのは、嘘だったろう。 瞬は、兄を怒らせて、叱られたかったのかもしれない。 もしかしたら、もう俺とは関わりあうなと止めてほしかったのかもしれない。 それくらい、瞬は、変わってしまった自分に罪悪感を抱いていたのだろう。 ――いずれにしても。 秘密がなくなって、あの兄弟の絆は以前より深く強くなったのだと思う。 だが、兄とふたりきりで夕涼みをしたあの季節は、二度と瞬の許に戻ってはこないのだ。 Fin.
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