例によって、城戸邸パーティホールの中央に、電話ボックスほどの大きさの箱が、ででん★ と鎮座ましましている。
紫龍製作のタイムマシンは、相変わらず、不恰好を極めつくしていた。

氷河は、意識したわけでもないのに緩慢な動作で、嬉々として恐怖の箱に乗り込む瞬の後に続いた。
見たところ、中は以前のそれと大して変わったところもない。

「おい、紫龍。貴様、いったい、この箱のどこを改良したんだ? 一般人にも耐えられる程度には衝撃が軽減されるようになったのか?」
「一般人を乗せる気がないのに、そんなところを改良してどうなる。見てわからないか? タイムマシンの外壁をピンクに塗り替えたんだ」

「…………」
それを、紫龍は改良と言う。
彼の使用辞書が、一般人のそれとは違うことを失念していた自分自身を、氷河は力一杯ぶん殴ってしまいたかった。

「し……紫龍〜〜〜っっっ !!!!!! 」
クレームをつけようとして、氷河がマシン製作者の名を口にした途端、これまた例によって、彼の身体に激しい重加速が加わる。

氷河のいちゃもんを聞く耳など持っていない紫龍が、タイムマシンの起動スイッチを入れたらしい。

そんなことをしても無意味なのだが、激しい重加速から瞬を守るべく、氷河は瞬の身体を抱きしめた。
これだけは、このとんでもない時間旅行のお供の役得である。

それだけが、この欠陥タイムマシンのいいところだった。






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