僕と氷河は結構うまくやっていけていた――と思う。

氷河の何かに挑むようだった眼差しは、少しずつ落ち着いてきていた。

僕はそれまでずっと一人きりで──寂しくはなかったけど、退屈していたから――、僕の生活のすべてが氷河を中心に動くようになっていた。

子供を育てる母親って、こういう気持ちなんだろうか。
気まぐれで、我儘で、こっちの苦労に何も報いてくれるわけじゃないのに、たまに見せてくれる素直な態度やはにかんだ様子が嬉しくて、何でもしてやりたい気分になる。

こういう言い方はおかしいと思うけど――僕は、氷河を可愛いと思うようになってきていた。

ちょっと見には恐い傷も、痛々しくてかわいそうに見え、意地っ張りで、変にプライドが高いところも、必死の背伸びなのだと思うと微笑ましい。

氷河は、ちっとも可愛くないところが可愛くて、普通なら腹の立つようなことをされても、僕は不思議と腹が立たなかった。






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