ともあれ、氷河はいつもいつでもそんなふうだった。
なので、今、瞬は悩んでいた。

今日、瞬は、実に唐突に、氷河から鉢植えの鳳仙花を贈られたのである。
不粋な人間であるところの瞬には、当然のことながら、氷河の意図がわからない。
まるでわからなかった。


鳳仙花──。
ツリフネソウ科(Balsaminaceae)ツリフネソウ属(Impatiens)の一年草。
原産地は熱帯アジア。

子供の頃にはよく、その種を飛ばして遊んだものである。
花の季節が終わり、鳳仙花が種をつける頃になると、その種を包んだ袋は、そっと触れるだけで、すぐにパチンと種を弾かせるようになる。
それが妙に楽しくて、幼い頃には、仲間たちと争うようにして鳳仙花の種を飛ばしあったものだった。

もっとも、瞬が氷河に贈られた鳳仙花は、まだ種をつけるところまでいっておらず、今を盛りと可憐なピンク色の花を咲かせていたが。

夏に咲く花である。
わざわざ探して持ってきてくれたのだということはわかる。
しかし、瞬には、氷河の意図がわからなかった。
なぜ、この真冬に鳳仙花なのだろう?







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