それでも。 そんな事態になっても氷河が気楽に構えていられたのは、彼が、瞬との仲直りの秘策を心得ていたからだった。 瞬が意地を張って拗ねていても、悲しみにくれて涙している時にも、その肩を抱き、髪に口付け、一言二言甘い言葉を囁いてベッドの中に連れ込みさえすれば、問題は解決する。 瞬は大人しくなり、あるいは慰められてくれる。 これまでの経験から、氷河はそう信じていた。 そういうわけで氷河はその夜、いつもよりかなり早い時刻に、胸に秘めた秘策を実行に移すべく、瞬の部屋へと足を運んだのである。 だが、彼はそこで、自身の油断と驕りを思い知ることになった。 秘策の実行も何もあったものではない、氷河は瞬のベッドどころか その部屋の中にも入れてもらえなかったのである。 七匹のこやぎをモノにするために精一杯の努力をしたオオカミよりも優しい声で、氷河は瞬に部屋のドアを開けるよう言ってみたのだが、氷河のこやぎはかなり賢いらしく、彼がオオカミの声に騙されることはなかった。 |