「元ちとせさんの『ワダツミの木』」 「私の中で『ワダツミの木』は戦士のイメージを持つ歌です。特に南の海で散った方々の……」 ――とのことでした。 万朶の桜さん、リクエストどうもありがとうございます! 「南の海で散った方々」で、カリブの幽霊聖闘士などを思い出した私は、連想能力矯正の必要がありそうです。すみません。 さて、元ちとせさんという方を、(例によって)私は存じあげませんでした。 検索するまで、お名前の雰囲気からして詩人なのじゃないかと思っていた……; 検索して初めて、『もとちとせ』さんではなく『はじめちとせ』さんと読むのだということも知りました。 当然、この曲も知らなかったのですが、お題をいただいた数日後に、『Music Lovers』なる番組に元ちとせさんが出演されることを知り、チャンネルを合わせてみた私。 そこで、私は幸運にも『ワダツミの木』を聞くことができたのですが、正直、聞いてびっくり仰天してしまいました。 この『ワダツミの木』という曲、私は、歌詞の雰囲気からして、もっと透明感のある声で、もっと静かに歌われる曲なのだとばかり思い込んでいたのです。あの歌声(と歌い方)は、まさに深紅の衝撃でしたね。 (元ちとせさんは本来 民謡歌手なのだそうで、そう言われてみると「なるほどー」と得心できたのですけども) 私は、その時既に(歌詞の内容だけで)ストーリーを決め、プロット作業に取りかかっていたのですが、実際にあの歌を聞いてからストーリーを考えていたら、全く違う話になっていたかもしれません。 少なくとも、舞台は日本になっていたと思います。 で、『ワダツミ』と言われますと、私はやはり最初に『きけ わだつみのこえ』を思い出します。 おそらく古事記等で海の神様方のお名前を知る前に、私は この本のタイトルで『ワダツミ』なる言葉を知ったと思います。 本来ならシビリアン・コントロールする側のお偉いさんになっていたかもしれない、才能と前途ある若者たちが、戦場に散っていく(声には出せない)無念。 悲壮で美しいからこそ、決して美化してはいけない史実。 しかし、さすがに、そのネタで話を書くことは危険です。 なので、こういう設定に相成りました。今回の話の舞台はエーゲ海です(いくら何でも飛びすぎのような気がしますが、南の海に変わりはない)(はず)。 しかし、エーゲ海と聞いた途端、「 Wind is blowing from the Aegean 〜♪」が頭の中で響いてくる自分が実になんとも; 話を書いている間に何度、「『魅せられて』じゃなく『ワダツミ』だってば!」と自分を戒めたことか。 我ながら情けなさの極みでございました……。 でもって、『赤い花』というのも、氷瞬話のモチーフとしては なかなか新鮮でしたね。 瞬ちゃんのイメージカラーというと、やはり百合の白か聖衣のピンクの印象が強いですから、瞬ちゃんを花になぞらえる時も、私は白とピンクを多用してきました。 私は、自分では、「私くらい乱暴に“何でもあり”な二次創作をしている もの書きもいないだろう」と思っているのですが、こういう時に自分の中に意外な固定観念があることに気付いて驚かされます。 キリリクをいただくことは、そういう意味で大変いい刺激になりますし、興味深いことですね。 念頭にあるイメージカラーがピンクか白か、赤色か。 それだけで、結構キャラ作りの過程も違ってきます。 もちろん、花の色が赤いという一事で、私の中にある瞬ちゃんのイメージやキャラの定義がコペルニクス的転回を見ることはなかったのですが、それでも微妙に何かが違ってくる。 私は、話を書く時に、特殊な場合を除いて、キャラの全身イメージや場面全体像を思い描くことは ほとんどありません。あるのは、その時々のキャラの表情だけ(それもドアップで、眼差しの具合いとか、唇の形とかしか浮かんでこない)(文章もそういう文章になっていると思います)。 そのイメージの中の瞬の眉が、今回はいつもより少し(ほんの少しだけ)つり上がり気味だったように思います。 私は、そういう意味では、動画(アニメーション)の鑑賞等もあまり一般的に行なっていないのだろうと思う。 動きなんて、ほとんど見ません(動画なのに!)。私が気にするのは、ストーリーの意味・整合性とキャラの感情。 それらのものをより効果的に視聴者に訴えるため、絵は美しい方がいいですし、音楽も適切なものであってほしいとは思いますが、映像がどんなに美しくても、どんなに凝っていても、意味(筋・テーマ)が納得できるものでないと、全く感動できない。 私がこれほど『聖闘士星矢』という作品にのめり込むことができているのは、大きな矛盾や破綻の生じる隙がないほど、『星矢』の作品テーマが単純明快だからなのじゃないかと思っています(←ものすごーく褒めてます!)。 古き良き時代の『努力・友情・勝利(+希望+愛)』が『星矢』にはある。 本当に安心して見ていられるんですよね、『聖闘士星矢』という作品は。 二次創作でちょっとセンシティブなテーマを取り入れたとしても、現実的な矛盾や理不尽を描こうとした時にも、『努力・友情・勝利(+希望+愛)』という基本理念がはっきりしているので、ストーリーの収拾に迷うこともない。 なにごとも基本が大事、基本が有効。 『聖闘士星矢』という作品は「基本を忠実に守りつつ、奇をてらう」というアクロバティックなことをしてのけた、実に実に偉大な作品だと思います。 そういう偉大な作品をオリジナルとして書かせていただいた話がコレというのも情けない話ですが、それも書いている人間の未熟ゆえ。 「きっと きゃわもそれなりに頑張ってるのよねー」 と、寛大なお心をもって お読みいただけましたら幸いです。 万朶の桜さん、リクエスト、どうもありがとうございました! |