さて、こちらは、兄の真意など考えようともしない瞬である。 他の誰かならともかく、敬愛する兄の親切を疑うことなど、瞬にできようはずもない。 「よかった。兄さんと氷河、先月以来喧嘩とかはしてないけど、口きいてるとこも見てなかったから、もしかしたらほんとは仲悪いのかと心配してたんだ」 「…………」 先月来抱き続けてきた懸念が晴れてにこにこ笑っている瞬に、 『絶対、裏に何かある』 とは、氷河には、口が裂けても言うことはできない。 彼にできたのは、瞬のために、少々強張った表情で頷くことだけだった。

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