薔薇の運命






いよいよ、闘いの時がやってきました。
日頃から、立派なブラッディローズになるために刺を磨いていた1号は、大張り切りです。

「ついに……ついに、この日が来たぜ〜!」
そう言う1号の声は、感激のあまり、少し震え気味。

仲間たちは、口々に1号への祝辞を口にしました。
「おめでとう……! 1号は、今までずっとこの時を待ってたんだもんな。鮮やかに散って、晴れ姿を見せてくれよ!」
「見事、敵の心臓にぶっすりいって、白い花びらを真っ赤に染める1号の姿を楽しみにしてるよ」

「みんな、ありがとう! 俺はやるぜーー!」
1号は、仲間たちの励ましを受けて、ますますやる気満々です。


「あ、アフロディーテ様が来たよ」
「いよいよ出陣だね、健闘を祈る!」

「よっしゃあ、気合入ってきたぞー! 俺のブラッディローズ魂、見せてやるぜ!」

ついに訪れた決戦の時。
バラたちの目には、彼等の高貴で美しいご主人様の姿しか映っていません。
敵がどんな姿をしているのかなんてことは、バラたちには関係ないのです。

「ではまず、ロイヤルデモンローズからいってみようか」
バラたちのご主人様は、余裕の笑みを浮かべながら、高貴な声で言いました。

そして──そして、何ということでしょう!
バラたちの高貴で美しいご主人様は、やる気満々のバラ1号ではなく、その隣りに咲いていたバラ2号を、その白魚の指で摘み取ったのです。

「な……なにいっ !? 」
1号の驚きは、それは大きいものでした。

「あああ〜……2号……!」
「さ……さよなら、みんな〜……っ!」

バラ2号はと言えば、この思いがけない展開に動転しつつも、立派にその役目を果たしてみせました。
彼は、ロイヤルデモンローズを、完璧に演じてみせたのです。

「素晴らしいロイヤルデモンローズだ!」
「さよなら、2号……。おまえの見事な花粉の飛ばしっぷりは、永遠に忘れないぞ……!」

バラたちは皆、2号の美しい姿に感動しました。
もう二度と会うことのない仲間の、最期の華麗な姿を、彼等は自分の目にしっかりと焼きつけたのです。




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