薔薇の風雅






ところで。
バラ園の片隅で小さな恋の物語が始まろうとしていたその時も、実は双魚宮での闘いは続いていました。

バラたちの目には、高貴で美しい彼等のご主人の姿しか映っていないので、彼等にはバトルの進行状況はわかりません。
バラ園のバラたちは、高貴で美しいご主人様の姿を追って、状況を判断するのみでした。


闘いが始まってしばらく経った頃です。
敵である青銅聖闘士が、どうやら生意気にも、バラたちの高貴で美しいご主人様に、何らかの技を仕掛けてきたようでした。

もちろん、バラたちの高貴で美しいご主人様は、華麗にその技を防いでみせました。
でも、敵も少しはやるのでしょうか。

バラたちの高貴で美しいご主人様は、その際にちょっと身体をぐらつかせ、
「うおっ !! 」
という美声を、バラ園に響かせました。


高貴で美しい魚座の黄金聖闘士の『うおっ !! 』を聞いたバラたちは、やんややんやの大喝采。

「アフロディーテ様、今日は一段と冴えてるぜっ!」
「『うおっ!』だそうだ、『うおっ!』。なんてハイブロウなシャレなんだ! さすがは我等のご主人様!」
「アフロディーテ様の美しさは、知性と風雅とエスプリに裏打ちされてるんだよな」
「そこいらの白痴美なんかとは訳が違うぜ!」
「そんなわかりきったことを、今更言うなよ、5号」
「ははは、すまんすまん」


『うおっ !! 』でこれだけの大絶賛です。
この上、『ぎょっ !! 』が出ていたら、バラたちは感動のあまり失神してしまっていたかもしれません。




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