■ 恋という名の あとがき ■





『ご無沙汰』程度の言葉で片付けられないほど長らくご無沙汰しておりました、パターン研究。
私自身、書き方を忘れかけているところがなくもないように思いますが、頑張って いってみたいと思います。

さて、今回205500カウントリクエストとしていただきましたお題は、
「何者かにむにゃむにゃされ、それをネタに脅されて窮地に立たされている瞬ちゃんを 氷河は救えるか?」
――何という素晴らしいお題でしょう。黄金色に輝くお題とは、まさにこのこと!

ところで私は黒い畑のパターン解説ページにおいて、これまで幾度もパターンの素晴らしさを語ってまいりました。そして、パターンゆえの難しさも語ってまいりました。
誰もが展開を知っているパターンゆえの安心感、万人に受け入れてもらいやすい汎用性。
そして、パターンゆえにマンネリに陥りやすいという危険と、料理の難しさ。

やおい書きは、パターンの長所を取り入れつつ、他の新鮮な何らかの要素をパターンの中に組み込んで、マンネリ化を回避するための努力をしなければならないのです。
まして今回のように黄金色の中の黄金色ともいうべきパターン話では。
キャラ配置で奇をてらう等の手法が許されるのは、せいぜい一度だけ。二度目はない!(と思っていた方がマンネリに陥る危険を減らすことができると思います)


……とかですね〜、偉そうに言うだけなら私にもできるのです。
しかし、実際にそれを一つの話に起こそうと思ったら、半端でなく難しいのがパターン話。
その上、その作業にはいつも、「この展開、他の人が既にどこかでやったものなのではないか」という不安がつきまとう。

パターン話ほど、安易な気持ちで書いてはならないものもありません。
制服を着た時に、人間の個性や優劣は最も鮮明に浮き彫りになるのです。






◆◇◆ そういうわけで、今回のパターンポイント ◆◇◆

(最強なはずの)瞬ちゃんが何者かにむにゃむにゃされ、
それをネタに脅されて、
窮地に立たされている瞬ちゃんを、
(お清めえっちで)氷河が救う

 ああ……! 眩しいほどに黄金色です!





◆◇◆ 今回の反省点 ◆◇◆



■ 反省点その1

いただいたお題は、「窮地に立たされている瞬ちゃんを 氷河は救えるか?」でした。
氷河はもちろん見事に瞬ちゃんを救ってみせました。
その助平心で。

…………これって、きっと多分おそらく どう考えても、氷瞬的にはNGな落ち。
きっと多分おそらく どう考えても、反省点であると思われます。


■ 反省点その2

ハーデス冥界編で萌えさせていただきました、瞬ちゃんの名セリフ(?)、「いやだ、いやだっ!」。
私は今回、ぜひともこのセリフを瞬ちゃんに言わせようと考えまして、いつものウチの瞬なら「いや」と言うところを一部「いやだ!」に変えてみました。みたのですが〜;

浮いてる……。もう まじで、ぷかぷかと。
そもそも「いやだ」を言う相手が氷河で、瞬ちゃんが 氷河を好きな自分を自覚済みというところが、私の設定ミスでした。
次回は、「浮かない『いやだ』」を目指します!






◆◇◆ “カップリングの外の人”考 ◆◇◆

今回のようなパターン話における主眼は、過去の もしくは 現在進行形の過ち――ということになるかと思います。
瞬ちゃんが何者かに脅されるかどうかは、この際 大きな問題ではありません。
脅されなくても、そこに負い目あるいは罪の意識がある限り、また、その事実を知った氷河に嫌われる可能性がある限り、瞬ちゃんは氷河にその事実を明るく告白なんかできないでしょうから。

罪または過ちの存在――の次に、この手の黄金パターンにおける重要ポイントは、「脅迫者を誰にするか」ということ。そして、その脅迫者を善人にするか、悪者にするか――ということであると思います。
一般的には、脅迫者が脅迫に及んだ理由を「恋心が募って」ということにすれば 彼は大部分の読み手さんに好意的 OR 同情的に受けとめてもらうことができ、そこに恋という感情が存在していなければ、彼は悪人であるという受け取り方をされることが多くなりましょう。
ですが、そのいずれの設定を採用したとしても、本来恋人同士である二人が存在し、彼等が愛し合っている限り、脅迫者は邪魔者にして卑怯者、かつ当て馬ということになります。

この、邪魔で卑怯で当て馬な脅迫者を誰にするか。
これは慎重に選ばねばなりません。なにしろ、へたをすると、脅迫者として選ばれたキャラをお好きな方が、その話を読まれた際にご不快を覚える事態を生じかねませんから(そうなるように書いちゃいけないという法はないわけですが、でも、敢えてその可能性を大きくする必要もないと(私は)思う)。

もちろん、すべては書き方です。
同じ当て馬でも、書き方によって、むしろ主役のカップルより第三の人物の方が“受ける”場合もあります。でも、そうするためには、脅迫者の事情説明や心理描写のためにページを割く必要が出てきます。それが丁寧であればあるほど、書き方が巧みであればあるほど、脅迫者は読み手さんの理解と共感を得られることになる。読み手さんだけでなく、彼に迷惑を被っているはずのカップリングの二人から ですら。
そしてまた、しかしながら、どれほど紙面を割き言葉を尽くして脅迫者の内面を掘り下げ、どんなに脅迫者をカッコよく書いても、「好きなキャラが当て馬にされるのはいや」と感じる方がおいでになることもまた厳然たる事実です。

まあ、そんなことんなを考えているうちにどーすればいいのかわからなくなって、肝心要の文章力にも自信がない私は、今回のような逃げ方をするわけなのですね〜(結局言い訳ですか;)。


ところで私は、↑ において、「脅迫者として選ばれたキャラをお好きな方が、その話を読まれた際にご不快を覚える可能性を敢えて大きくする必要はないと思う」と書きましたが、これは二次創作特有の問題――というか障害であると思います。
オリジナルなら、むしろ脅迫者を単純な悪人にしてしまった方が、キャラ同士の善悪の構図が単純化されて、読み手さんに混乱を与えずに済みます。長編でそれをしてしまったら作品の厚みが感じられなくなることもあるでしょうが、短編なら、むしろその方がすっきりして読みやすいかもしれない。

男性向けのその手の話では、加害者のキャラ設定どころか顔すらもない――ということがままあるそうですが、これは、一つの作品の目的をただ一つのことに特化・集約し、不要部分を極限まで削ぎ落とし、極端な単純化を試みた驚異の技法でありましょう。
本当にすごいと思います。

男性向けには 男性向けの 工夫あり
やおいには やおいの 楽しみや〜♪

パターンという伝統形式の内容も成り立ちも、世界によって様々のようでございます……。








◆◇◆ 今回の教訓 ◆◇◆

氷河の助平心は瞬ちゃんを救い、それと同時に世界を救う。スケベ心は侮れません。






◆◇◆ 今回の教訓のおまけ ◆◇◆

かの フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ曰く、
「人間が容易に自分を神だと思わないのは、下腹部があるためである」

助平心があるゆえに、人が傲慢になりきれないのだとしたら、助平心は大切にしたい人間性の一部です。
大切にしましょうv





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