第八章 陽光




「なんだよ、俺たちの出番なんかないじゃんかよ!」

星矢は、心底から不満そうに、月の見えない空に向かって吼えた。

禁域を覆う空には、河のような銀河が白く輝き、その周囲の星たちも、月のない分、明るく輝いている。

既に、ベレニケたちは、アテナの聖闘士の敵とも言えなかった。

以前はもっと手応えのあったアベルの聖闘士たちは、太陽神の加護が注がれなくなったせいなのか、ひどく脆弱になっていた。
あるいは、それは、氷河が強すぎるだけだったのかもしれないが。

ともかく、氷河の手が彼等の周囲の空気を撫でるだけで、彼等はばたばたと倒れていったのである。

「そいつらを片付けておけ。俺は先に行く!」


月の第一日目の新月。
月の光がなく、月の力が最も強まる夜。


闇の中、しかし、氷河には光のある場所がわかっていた。








【next】