星矢は瞬のクラスメイトで、俺のバスケ部の後輩。
紫龍は俺のクラスメイトで、星矢の幼馴染みで、プレイすればそれなりの奴なんだが、髪を切るのが嫌でバスケ部のマネージャーをしてる変人。

その二人に、俺は吊るし上げを食らうことになった。

「おまえ、入学して3ヶ月しか経ってないいたいけな新入生を手込めにするとは、どういう了見だ? しかも、こんなところで」
「うるさいな。やりたい盛りなんだ」
「せめて、学校をフケて、人の来ないところでやれ」

糾弾されているのは俺一人だったが、身仕舞いを整えた瞬は、俺の横の椅子に座って、まるで自分が責められているみたいに、真っ赤になって俯いている。
かわいそうなくらい、身体を縮こまらせていた。

「おまけに、瞬は新入生総代を務めた秀才サマだぞ。これまで清らかに勉学だけに励んできたんだろう。どう考えたって――」

紫龍が、言葉の先を澱ませる。
はっきり言っちまえばいいものを。
その通り。
俺は、まっさらさらの瞬のお初をいただいたんだよ。

「うるさいな。瞬がいいと言ってるんだからいいじゃないか」

「瞬、ほんとかよ」
まさか、校内であんなシーンを見ることになるとは思っていなかったのか、なかなかショックから立ち直れずにいたらしい星矢が、やっと口を開く。

「……うん」
頷く瞬の声は、蚊の鳴く声より小さかった。

「無理しなくていいんだぞ」
「ううん、わかってて来たから」

そう答えながら、瞬は一度も顔をあげて級友を見ていない。
見れないんだろう。

「…………」
そんな瞬を見て、瞬は俺を庇っているのだと思ったらしく、星矢は両肩を落として、大きく嘆息した。

「瞬がこう言ってるんだ。構わんだろうが」
「いいわけがなかろう! ここは学校だぞ! 学び舎! 勉学とスポーツに励む場所だ!」
「好きで来てるんじゃない」
「貴様はそうでも!」

紫龍は、そんな瞬を見る前から、悪党は俺一人と決め付けている。


「瞬、何とか言えよ」
「…………」

星矢に声をかけられても、瞬はひたすら顔を伏せているばかり。

事態が膠着状態に陥ったところで、都合よく始業のチャイムが鳴った。


「とんだ邪魔が入った。今日、学校がひけたら、家へ来い」
「……うん」

俺は捨て台詞のように瞬に命じ、瞬は俺の命令にこくりと頷く。
それを確かめると、俺は、星矢と紫龍の顔も見ずに、ロッカールームを後にした。





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