それでもいいから――同情でもいいから、瞬が欲しい。
そう思ってしまう俺は、かなり不様な男なんだろう。

いっそ、徹底的に不様な男になりさがって、瞬の家に押しかけていき、同情でも蔑みでも何でもいいから俺の側にいてくれと、瞬の前に跪いて懇願できたらどんなにいいだろう。

だが、俺の中には、まだプライドというものがあって、そいつが、どうあっても、俺にそんな真似をさせてくれそうになかった。



俺がそんなふうに、自分の中のプライドに屈していた頃、瞬は夜の街を駆けていた――らしかった。


夜中の2時半過ぎ。
訪問客を告げるチャイムが鳴り、億劫な思いでテレビモニターを見ると、そこに瞬の姿があった。

「に…兄さんが眠るの待って、抜け出してきたの。入れて、僕、氷河、お願い……!」

息せき切った瞬の声を聞いた途端に、俺は、あっさりと自分のプライドを捻じふせてしまっていた。





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