翌朝。

氷河は、ひどく暗い顔でダイニングルームにやってきた。

「はれ、ひゅんは? 一緒ひゃにゃいにょか?」
6枚切りのトーストを3枚重ね、豪快な朝食に挑んでいた星矢が、日本語になっていない日本語で尋ねてくるのにも、氷河は綺麗に無視を決め込んだ。

「おい、氷河」
とりあえず、口の中にあったものを飲み込んで、星矢が少し真顔になる。

再度問い質されて渋面を作った氷河は、ぼそりと星矢に答えた。
しつこく追求されることになるのは面倒だと考えたせいらしい。
「夕べの折檻のせいで、起きあがれないでいる」

「折檻って、おまえ、また、何か我儘言ったのかよ!」
「俺は、俺の立場にいる人間として、当然の要求をしただ――」

氷河の弁明を最後まで聞かずに、紫龍がガタンと音を立てて椅子から立ち上がる。
彼は、そして、無言でダイニングルームを出ていった。

「……追いかけないのか?」
紫龍がどこに向かったのかを勘良く察して、星矢が氷河に尋ねる。


「その気力と体力がない」
「へ……?」


紫龍が席を立ったダイニングテーブルの自分の椅子に、氷河はぐったりと、まるで倒れ込むようにして腰を落とした。






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