「ハーデス!」 ふいに、扉の向こうから女性の声が響いてきた。 国王以外に誰も知らないと言っていた部屋の扉の向こうから。 「私ひとりではありません」 ハーデスが扉に向かって、声を発する。 それが、暗に、入ってくるなと告げるものだということにも気付かないほど、瞬の心は乱れていた。 瞬を静かに寝台に横にしてから、ハーデス自身が扉の外に姿を消す。 「どうなさったのです」 「侍女に――あの男が襲われたと聞いて……襲った者が捕らえられて牢に繋がれたと――そなたではなかったのですね」 扉が閉じられ、それ以上の会話も、その女性の姿も、瞬には確かめることはできなかった。 |