「氷河……」
ただ見られてることに困惑したらしく、瞬の瞳にまた不安の色が浮かぶ。

「あ……申し訳ございません。大変にお綺麗なので、つい」

もちろん、知っている。
瞬の身体をどうすればいのか。
知っているからこそ――知っているはずの自分が何をしてしまうのかわからず、氷河は、何よりもそんな自分自身が恐ろしかった。 

「氷河……どうして、そんな恐い目してるの」
「瞬様が……恐がるようなことをしたくはないので――」
「でも……」

瞬は、今にも泣き出しそうだった。
まさか、自分がこんな状態に置かれることになるなどとは考えてもいなかったのだろう。
ただ優しい抱擁を――夢のように優しく抱きしめられることだけを――瞬は思い描いていたのかもしれなかった。

「――では、私の目をご覧にならないようになさっていてください。もうずっと、この時を待っておりましたので、私は獣の目をしているかもしれない」


「氷河……」
見るなと言われるほどに、目がそこに向く。
無理に作られた形ばかりの笑みの奥にある氷河の瞳の色に、瞬は萎縮し、だが、その視線に捉われているうちに、徐々に、瞬の身体は熱くほてってきた。

「え……?」
触れられてもいないのに、身体が疼き出す。
瞬の手は、自分を救ってくれない氷河の代わりに、シーツに救い求めていた。

いつも見知っている氷河のそれとは違う視線から逃れるために、瞬は目を閉じるしかなかった。
だが、目を閉じても、氷河の視線を感じずにいることができない。

「あ……」
瞬は仰臥させられていた身体を、氷河の視界から隠そうとして身をよじった。


氷河の手が、瞬の手首を掴んで、それを阻む。
無意識の行動だった。






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