「生きてる……」 朝の光が眩しい。 眩しいと感じることで、瞬は、自分の身体に平生の感覚が戻ってきていることを知った。 「僕、生きてるの……」 瞬には信じられなかった。 次に目覚めた時には、死んでいるか、もしくは気が狂っているだろうと思っていた。 それとも、気が狂ってしまったせいで、自分は自分が死んでいることに気付いていないのだろうかと、瞬は懸念した。 不思議なものを見る思いで、自分の腕を宙に伸ばしてみる。 自分の意思で自分の身体を動かせる感覚が、奇妙に感じられた。 昨夜、この身体は、氷河が意図した通りにしか動かなかったというのに。 (氷河……?) 夕べ、瞬の身体を思いのままにしていたその男は、寝台の上にいなかった。 途端に、瞬は、ひどい不安に襲われたのである。 昨夜は、ずっと重なって、触れ合っていた。 どこからが自分で、どこからが氷河なのかわからないほどに溶け合っていた――と思う。 その氷河の姿がない。 瞬が感じた不安は、昨夜は一つだったはずの身体が本当は別々の身体で、氷河は自分ではないのだと思うしかないという不安ではなく、自分が氷河を自分の身体の中に取り込んでしまったのではないかという恐れだった。 事実、瞬の、氷河を受けとめていた部分は、一夜が過ぎた今でも、何かがそこに息づいているように疼き、痺れていた。 |