その日、瞬は、下校途中に立ち寄った駅前の書店を出たところで、氷河の姿を見かけた。 「氷河?」 彼はどこかに急いでいるらしく、ほとんど走るようにして、夕闇に包まれた歩道を、家路を辿る人々とは逆の方向に突っ切っていった。 考えてみれば、氷河に出会ってから半年以上になるというのに、瞬は、あの広い家で瞬を待ちわびている氷河をしか知らなかった。 それ以外の時、氷河がどんなふうに時間を過ごしているのかを、瞬は氷河に尋ねてみたこともなかったのである。 勝手に、あの広い家で一人ぽつねんとしている氷河の姿を想像するだけで。 それが好奇心だったのか、不安だったのか――瞬は何かの力に背中を押されるようにして、氷河の後を追い掛け始めていた。 そして、駅前の繁華街の入口で、彼を見失った。 |