恋する悪魔 《前編》





瞬は、その小さな犬に夢中だった。

金色にも白銀にも見える毛並みをした小型犬。
瞳の色は真っ青で、毛唐の柴犬というものがいたら、こんな姿をしているのではないかと思えるような犬だった。

瞬は、片時も――どんな時にも――その犬を自分の側から離さない。
犬の方も、いつも瞬の後を追う。

瞬は、その犬に『氷河』という名をつけていた。






【next】