■ Beyond Innocence あとがき ■





黒い畑をオープンにして最初に更新する話がこれ――というのも少々問題ありのような気がしますが、書いてしまったものは仕方がありません。
かしこみかしこみ、お久し振りのパターン研究、始めさせていただきます。

ちなみに、今回の話が黒い畑にきているのは、レイプ場面があるからです。性的表現が表の畑レベルを超えているからではありません。
(ので、そちら方面の期待はなさいませんよう)(と、あとがきに書くことの無意味さよ)

レイプ――この憎むべき犯罪が、やおいの世界でそれなりに受け入れられているのは、これがある程度の形式・お約束を備えており、様式美というものを有しているからだと思われます。
その悲惨な実態にも関わらず、お約束・形式が整っているので、(ある意味)安心して読める黄金パターンの一つになっているわけです。
近況は存じあげないのですが、少なくとも10年くらい前までの同人界はそうだったように思います。

もちろん、これが本当にお嫌いな方もいらして、そういう方々のお気持ちを考えると、こうしてネタとして話を書くことにすら、私は非常な心苦しさを感じます。氷瞬ではほとんど見ないですしね、本格的レイプ。
とはいえ、私の今回の話も本格的(?)レイプとは程遠く、そのシーンを書く際に私が最も気を遣っていたことは、「なるべく痛くなさそうに、なるべく悲惨な描写は避けて」というものでした。
書き手がそういう気配りをすることが、もしかしたらレイプ物をとっつきやすい黄金パターンにする一因になっているのかもしれない――と思うと、心中フクザツではあります。

さて、そのレイプのお約束。
思いつくままに挙げてみますと、
(1) 暴行に及ぶ原因は、被害者に対する加害者の過剰な執着である
(しかし、その執着が、『憎悪』系・『独占欲』系のものならともかく、『愛』ゆえだと言われると、私は理解に苦しみます。本当に愛しているなら、レイプはすまい)
(行きずりの者が加害者である場合には、それは話のメインイベントではなく、一エピソードもしくはエッセンスにすぎません)
(2) 被害者が、大なり小なり肉体的快楽を得ることが多い
(これは、犯罪性を薄らげることに役立ちます)
(3) 被害者が男子である
(読み手は、そのほとんどが女性ですから現実感が薄れます)
(4) 加害者・被害者がメインカップルであった場合(=加害者がメインカップルの当て馬でなかった場合)、愛ゆえのこと、思いあまってのことだったと謝れば、被害者は結構あっさり加害者を許してしまう
(これ、すごいと思います)

――等々があります。

ちなみに、(4)が読み手にあまり嘘くさく感じられずに済むのは、(2)にあるように被害者が肉体的快楽を得ることによって、ストーリー上、精神面での苦痛の方が重視されることになるためなのではないかと思います。精神面での傷は、言葉で癒すことが可能――というか、癒える過程を作品にしやすい・表現しやすいですしね。


ところで、パターン話の一筋縄でいかないところは、何もかもすべてがお約束通りでは、それこそお話にならない――というところ。
どこか一箇所だけでいいので、お約束以外の要素を採用しませんと、その作品は読む価値がないものになってしまうと言っていいでしょう。
が、ことレイプ関係のことに関しましては、そのお約束のどれかを放棄した場合、至るべき予定調和に行きつくことができず、それが故に、その話は大変に悲惨・陰惨なイメージを伴い、後味の悪い話になる可能性が大きくなります。
その手の話がお嫌いな方には、二度と作品を読んでいただけなくなる可能性すらある。
レイプはそれほど危険な題材です。安易に取り扱ってはならないのです。
(それがわかっていながら書くのか、私は)(うん……。もの書きのサガなの)






◆◇◆ そういうわけで、今回のパターンポイント ◆◇◆

レイプ (恐ろしいことに、これは確かに黄金パターンの一つです)
上記お約束の(2) (逆に、お約束(1)は外しました。(4)は微妙〜)
周囲のキャラがほもな二人を変だと思っていない (これはいつも通り)

――くらいでしょうか。
あと、神(もしくは悪魔)が人間を試すというネタは、イサクの犠牲やヨブ記、ファウスト等の例を挙げるまでもなく、物語の黄金パターンの一つです。
聖書では特に多いですね。イエスですら試されています。






◆◇◆ 今回の反省点 ◆◇◆



パターン研究のためとはいえ、瞬ちゃんと氷河が楽しくなく気持ちよくないえっちは、話を書いている私自身が非常につまらない。
やおい書きは趣味なんですから、自ら望んでつまらないことはしない方がいいと思いました。






◆◇◆ たとえば、氷瞬のお約束 ◆◇◆

レイプにお約束があるように、氷瞬にもお約束(というか、典型、一般的イメージ、類型)というものが存在すると思います。

基本は可愛い系、夢見る少女マンガ風カップル。
氷河は瞬ちゃんを好きで、瞬ちゃんは氷河を好きで、でも、多分、氷河の方が より瞬を好き。
氷河はちょっと普通じゃないところがあって(無愛想とか、マザコンとか、奇天烈な踊りを踊るとか)、でも、瞬ちゃんが絡むことでは時々かっこよくなる。

瞬ちゃんは基本的に愛され属性。
氷河よりは常識的もしくはお利口で、氷河を(意識的に、あるいは天然で)振り回していたりする。氷河は、惚れた弱みで瞬には頭があがらない。
あと、一輝兄さんと氷河が犬猿の仲。

まあ、こんなところが、氷瞬の一般的なイメージなのじゃないかと思います。

ですが、ですが、ですが!
すべてが全くこの通りであるサイトさんを、私は存じあげません。
ええ。つまりはそういうことなのです。






◆◇◆ 今回のおまけ 〜ハーデス様とアポロン様〜◆◇◆

思い切り趣味に走って、私のお気に入り神様ツートップを共演させてみました(次点にアベルが来ますv)(沙織さんは別格)。
神話では、ハーデス様がアポロン様の伯父様で年長者なので、今回の話でもその線でいってみましたが、実際のところは、ハーデス様よりアポロンの方が有力な神様だったりする。
というか、神様の力って、人間界での人気で決まるようなところがありますから、そりゃ、冥界の支配者よりは太陽神の方が人気はありますでしょう。

で、この二人、赤と黒の好対照。
やおってほしいとは全く思いませんが、二人が一緒にいる図は見てみたい。
濃いぞ、ものすごく! そして、二人の髪型を考えるに、あの二人が同じ画面に映っていたら、画面が狭く感じられて仕方ないに違いないと思います。
すすすす素敵〜v

アポロン様のキャラ設定は、現時点ではあってなきがごとしですので、天界編の短いご登場シーンの印象だけで、私は今回のアポロンのキャラを作りました。
一瞬の直感を信じて、キャラを再構築するのはやおいオンナの得意技。
この後、天界編の続きを観ることができたなら、自分の作ったアポロンと本家アポロン様の違いを楽しみたいと思います。

その際には、ぜひともアポロン様と瞬ちゃんが絡むシーンを作ってほしい……なーんて贅沢は言いませんが、氷河と彼の対決は見てみたい。
アポロン様のお姿を見ただけで、氷河は、
「暑い……」(←ハーゲン戦ふうにお願いします)
とか言い出しそう。
が……頑張れ、氷河!





【menu】