祈り



『嘘の死に憧れるな。生き続けた先にあるのが、本当の死だ』

そんなことを言ったのは、誰だったろう?
多分、それは、自らの命を絶とうとする者への戒めの言葉。

死は生の延長線上にあるから、必死に生きていれば、自ら求めなくても、死は向こうからやってくる。
──そんな言葉。

だけど、人間が生きるっていうことには、いったいどれほどの意味があるんだろう?

僕は、これまで精一杯生きてきたつもりだ。
精一杯戦ってきたつもり。
必死に。
僕は、石に齧りつくようにして生きてきた。

でも、この先百年生きたって、もう僕にできることは何もないよ。

必死に生きて、生き抜いた先にあるのが、本当の死。
それなら僕は、もう、いつ死んでもいいんだと思う。
光のない世界には、僕が生きている甲斐がない・・・・・
光が側にあった時には、意味あることが何ひとつできなくても、僕には、生きる甲斐があった・・・・・・

人が生の喜びを感じることは、とても簡単で、とても難しいことだね。
たったひとつの光が、見えているかどうか。
ただそれだけのことで、世界は、人の生と死の意味は一変する。

今の僕には、何も見えない。
見たいのに見えない。

人の幸せは、いつも希望でできている。
希望、希望、ただそれだけ。
だけど、僕のそれは失われてしまった。
その輝きは、今の僕には、もう見えない。

僕は盲目になったのかな。
ただそれだけのことなのかな。

神様。
それでも人は生き続けるべきだというのなら、僕に光を返してください。
僕の光を返してください。
それだけで僕は生きていけるから。

神様。
僕の氷河を返してください。







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