おまえは優しい人間らしい。
誰もがそう言う。
俺もそう思う。

俺は、おまえが人に冷たくするのを見たことがないし、
おまえに無情な振舞いをされたこともない。

おまえが誰かを裏切ることなど考えにくいし、
実際、おまえは一生そんなことはしないだろう。

おまえは、当然のように他人のために命を懸ける。
それは偽善でも何でもなく──そもそも、おまえは、自分のために何かをするわけじゃない。
誰かのためにするわけでもない。
おまえはただ、そうすることを自然だと思っているだけなんだ。

おまえが誰かのために自分の心と身体と時間を使役しているというのなら、その“誰か”は、おまえ自身ではなく、特定の個人でもなく、概念の上での“人間”だ。

誰かへの愛ではなく、愛という概念。
誰かへの信頼ではなく、信頼という概念。
そういうもののために、おまえは闘っている。

誰かのためじゃない。
俺のためでもない。

考えに考えて──そうすることの損も得も、意味も無意味も考えて、その結果のことなら、おまえが俺を守るために命を懸けてくれたって構わないさ。

だが、おまえは深くは考えない。
そうしたいから、そうする。
考えるまでもなく、そうするのが当然で、そうしないとおまえは居心地が悪いんだろう。


おまえにとっては、すべてが自然なことでしかない。
俺に優しくするのも、俺以外の誰かに優しくするのも。
俺を守るのも、俺以外の誰かを守るのも。


仲間だったら、おまえは素晴らしい仲間なんだろう。
トモダチというのなら、おまえは最高のトモダチなんだろう。


俺は、おまえを好きになんかなりたくなかった。







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