この世に生れ落ちたとき、人は誰でも美しい魂の持ち主で 汚れ傷付いていく自身の魂を悲しまない人間はいないのだろう。 真に強いものだけが、その事実に耐えることができ、 弱い人間は、その事実に打ちのめされるか、 あるいは、自身の汚れを諦め、受け入れる。 汚れ傷付く魂に、僕たちは抗い続けた。 命をかけて。 僕たちがどれほど必死だったか、そんなこともあなたにはわからなかったんだろうね。 闘いの中で懸命に自身を保とうとしていた氷河の心のバランスを、あなたは容赦なく打ち壊した。 氷河は弱かったよ。 でも、必死だった。 その美しい魂の持ち主を、あなたは僕から奪おうとしたね。 ねえ、だから、僕はあなたが大嫌いで、 それでも、あなたを慕う氷河を愚かだと思う。 人はどうして、強く美しく正しいものだけを愛するようにできていないんだろう。 誰もが 誰をも 愛することができなくなるから? 誰もが 誰にも 愛されなくなるから? 人の愛が、善や美や真理を求める気持ちではなくなった時、人の堕落は始まったんだろう。 僕の堕落が始まったのは、あの無人の宮だった。 |