しかし、そこはベット上だった。

俺は、しばらくの間、それが夢であり何も起きていないことに確認する為、両の掌を広げて見た。 同時に落ち着きを取り戻す為に、何度も肩で荒く大きく息をした。
もう何度目だろう……敵を倒し、瞬さえも殺す……夢の中にまで生命を奪い取る生々しい感覚が自らを襲うようになったのは。

「氷河……大丈夫?」
いつの間にか、そこにいる瞬の姿が視界に入ってきた。 夢で観たせいか、彼が傍に居ることに違和感があっても驚きはなかった。

当たり前だが瞬は生きている。

薄暗い室内で、久しぶりの優しい言葉は、いつになく心配そうな表情が感じ取れた。

「悪い夢でも見てたの?」
重ねて心配げに聞いてくる瞬に、自分の額の汗を拭いながら、俺は――無様な姿を瞬に見せてしまったことと、愚かな思考が見せた夢を振り返り、苦笑いする。
「は……はは。世の中が、おまえの願い通りに平和になる夢を見た。悪党共がいなくなって、俺は、人を殺す楽しみを味わえなくなって――そう、悪い夢だな……」
自分の見た夢を否定する……。
瞬は、薄闇の中、言葉を失った。








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