僕は君の死に対して常に無力であるだろう。
喪失という現象に対しても同様に無力だ。
君が泣くだろうから僕は死ぬこともできず
しかし君を喪う痛みに僕が耐え得るはずもない。
そして恐らく死ぬまで僕のこの我が儘は直らない。
それゆえ極言するならば君のことなどどうでもいい。
君が泣こうが絶望しようがもう僕にとってはどうでもいいことだ。
何故なら。
どうせもう僕はそのようなものを見ずに済むからだ。
「おまえ…どうして。なんで…」
氷河が繰り返す。
どうしても理解できぬといった表情で。
「おまえは…俺のことなんてどうでもいいと…」
氷河の言葉に混じるのは、驚愕、後悔、そしてもっと不明である何か。
ああ、君は僕が言ったことをいちいち覚えていたのか。
君のことなんて愛さないと、ひとことで言えばそれだけの、しかし現実には何十とおりもの言葉で語られしかもただその意味を表すだけの言葉の数々。
いちいちまじめにとりあってそれを信じてきたのか君は。
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