憧れの王子様。
ずっと待ち続けていた優しい王子様。
王子様との出会いは、多分、どんな女の子にでもあることなのです。
でも、実際に王子様を自分のものにする女の子は稀。
王子様を自分のものにする男はもっと稀でしょう。


氷河姫は、そんな稀に見る幸運を自分の手中に収めるための努力を開始したのです。
その努力には、少々の狡猾さと嘘も混じってはいましたが。


「王子が、一生俺だけを愛し続けると神に誓うなら、王子の国に行ってやってもいい」

「ほ…本当ですかっ!」

初恋の激しさと純粋さに捕らわれていた瞬王子が、氷河姫のその言葉の裏にある思惑になど気付くはずもありません。

「もちろんです! 僕は一生涯、氷河姫だけを愛し続けます!」
初恋の氷河姫と結ばれることだけが望みである瞬王子に、その誓い以外の言葉はありませんでした。



「なら、俺は瞬王子の国に行こう」

「ほんとに!?」
氷河姫の返事を聞いて、ぱっと嬉しそうに輝いた瞬王子の瞳。
しかし、その瞳はすぐに涙で潤み始めたのです。


「よかった……勇気出して、好きですって言って……」

人差し指で自分の涙を拭い取りながら、呟くようにそう言って、瞬王子が氷河姫に微笑を向けます。


「王子……」

瞬王子もまた、めぐり合った幸運(?)を手に入れるため、勇気を振り絞っていたのだと知って、氷河姫はとても感動しました。
そして、その感動は心だけでなく――まあ、その……身体にも作用したのです。



(うー。マジで可愛い……)


氷河姫はそれ以上耐えられませんでした。
涙ぐむ王子様の肩を抱いて寝台に座らせ、氷河姫は瞬王子に尋ねました。


「瞬王子。王子は、一生を共にしようと約束をした二人が必ずすることを知っているか?」
「え? なに? 僕、知らないです」
「そうか。やっぱり」
本当にこんな幸運が降ってくることもあるのだと、氷河姫は北叟笑みを隠しきれませんでした。


「ど……どんなことですか?」
不安そうに眉根を寄せて氷河姫を見あげる瞬王子の心許なげな様子が、ますます氷河姫の心を沸き立たせます。

「そんな不安そうにしないでいてもいい。俺が今から教えてやるから」
「あ、ありがとう。氷河姫」

ほっとしたように身体の緊張を解いた瞬王子の唇は、そして、次の瞬間には氷河姫のものになっていたのでした。






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