――俺は……死んだって、マーマを忘れない――

あの言葉が、自分のものになる。
氷河は決して――氷河のために我が身を捨てた者の存在を忘れまい。

この先、彼が、どんな人間を何人愛そうと、その誰にも、自分が消し去られることはないのだ――たとえ、彼自身が死んでも。

瞬には、それが、真に“生きる”ということのように思われた。


神を名乗るものの意思が、瞬を見詰めている。
この退屈しのぎを楽しむように――。


神には退屈しのぎでも、瞬には、それは、何よりも意味のあることだった。
神の思惑など、ヒトの知ったことではない。


「よかろう。その身体、私がもらった」


瞬の中でちりちりと燃えていた導火線の火が、突然加えられた力で加速する。

弾け飛ぶはずだった瞬の心は、水蒸気が凝結するように小さな結晶になり、そして、何の力も持たないただの存在に変質していった。





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