ヒョウガは、ある年の降誕祭に、シュンにとびきりのプレゼントを贈って、自分の恋を打ち明けようと思いました。

けれど、北の果ての小さな村には、ろくな贈り物がありません。
村の若者たちが恋した相手に贈るものは、大抵、常緑樹の葉を使って作ったリースや、村が雪に閉ざされる前に町で買ってきておいた髪飾りくらいのものでした。

でも、ヒョウガは、そんなものでは到底自分の思いのすべてをシュンに伝えることはできないと考えたのです。

ヒョウガは、シュンに贈るプレゼントを決めていました。


村から少し離れたところに、この北の国を治める神が住むと言われている険しい山がありました。
その山には、大きくて良質な水晶の鉱脈があって、神の館の庭には、水晶の花が咲いていると言われていたのです。

もちろん、人間が神の山に入っていくことは禁忌でした。
そんなことをしたら、神の怒りに触れると言われていました。

けれど、ヒョウガはどうしてもその花が欲しかったので──シュンの心が欲しかったので──誰も登ったことのない険しい山に、足を踏み入れてしまったのです。

人が分け入ったことのない山には、道らしい道もありませんでした。
まるでヒョウガが先に進むのを妨げるように、鋭く尖った岩や人の心を威圧するように巨大な樹木が、ヒョウガの前に立ちはだかります。
道のない山に自分だけの道を作りながら、氷河は山の頂上を目指しました。


険しい崖を登り、樹木の刺や尖石で手足を傷付けながら、ヒョウガはついに、水晶の花の咲き乱れる神の庭に辿り着きました。

そこは何と美しい庭だったでしょう。
神の庭には、赤や青や透明の大小様々な水晶の花が、夜の闇の中に紛れ込んだ昼の光のように咲き乱れていました。

その花々の中で、いちばん可憐で、いちばん鮮やかに輝いている薔薇色の花を、ヒョウガはシュンのために選びました。
そして、逸る心のままに、ヒョウガは急いで神の庭を後にしたのです。





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