「ああ、ほんとに綺麗」 瞬は聖夜の空を振り仰いで、優しく吐息するように、氷河に告げた。 「今夜は、世界中の人たちが幸せだといいね」 「俺はおまえの幸せしか望まない。おまえに愛されるなら、神に憎まれても平気だ」 「神様は氷河のことを憎んだりしないよ」 「神がそんな甘いもんか。自分の大切な者の幸福だけを願うことを、あいつは許さない」 「そんなことないよ。だって、氷河は、僕の幸せを願ってるだけで、他の人の不幸を望んでるわけじゃないもの」 「それは……そうだが」 「どっちかっていうと、僕以外の人も幸せでいてくれた方がいいでしょう?」 「まあ、どちらかといえば」 「うん」 人の過ちを許し、受け入れようとする人の心が、人を“善”へと導く。 それこそが、人が人に与えるいちばんの贈り物なのかもしれない。 あの時抱きしめることのできなかったシュンの身体を、ヒョウガは、今夜は、しっかりとその手で抱きしめた。 ![]() ![]() |